乱聴
今日こんなものを聴いた。
「東京湾景」吉田修一
東京湾景 東京湾景
吉田 修一 (2006/06)
新潮社
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この小説は私が今まさに住んでいる地域が舞台になっていたので少し興味をもって読み始めた。
この話に出てくる御楯橋や高浜運河、海岸通り、レインボウブリッジ、品川埠頭、天王州アイルといった地名は日常いつも私が通り過ぎたり目にしたりしているおなじみの場所で、いったいこの街、このシチュエーションの中でどういった恋愛小説が展開してゆくのか非常に楽しみだった。

ところで、私がこの街つまり品川駅の港南口側の地域に引っ越してきたのはちょうど10年前で、その頃がちょうど品川の再開発が開始されて間もない頃だった。
まだこの小説にも書かれた当時(2003年)よりもさらに「倉庫街」のなごりのある風景の街だった。
主人公の亮介の通う古びた銭湯「海岸浴場」も実在していた。
10年間でこの街は大変貌を遂げた。
亮介の住むようなおそらく低層の5階建てくらいのアパートは次々と取り壊され、高層のマンションに造り替えられた。
海岸浴場も建物もろとも取り壊された。
きっと今では亮介のアパートも壊されて無くなっているかもしれない。
そんな過渡期のこの地域を舞台にしたのがこの小説だ。

この小説で若い男女が知り合うきっかけはインターネットであることに私はすごく納得がゆく。
この地域はマンションばかりが建築されたが、商店や公園などがいつまでたっても出来てこない。コンビニが少しずつ増えてきただけだ。
だから、住んでいる人間どうしがふれあう機会も少ない。
近所に誰が住んでいるのかほとんど分からないような街だ。
若い男女が知り合う機会も少ない。
インターネットはそういう障害を軽々と超えるツールだ。

亮介の仕事はフォークリフトの運転で、相手の美緒はお台場で働くOL。
この対称的な見せ方も面白い。
品川の港南側からは海の向こうにいつもお台場が見える。
男と女、品川埠頭とお台場、そういった対称的なものの交わりやすれ違いといったものが、この小説にはずっと流れていて、何かそれが読んでいてもどかしい。

そして、さらに言えば、読んでいる自分とこの小説の主人公の歳の差も大きくて、それもまた読んでいてもどかしかった。
若い青年と女性の恋愛というのはこういうものなのか、と私はまたも思ってしまうのだった。

つまり簡単に言ってしまえば、若い頃は、ちょっとしたきっかけで恋愛の相手などどんどん取り替えていくものなのか、そして、それが当たり前のことなのか、という疑問だ。
それがいいことなのか悪いことなのか、ここで私が答えを出す気はないが、善悪は別として私ももっとこういう小説を若い頃にたくさん読んでいれぱ人生も変わっていたのかなあ、なんてばかなことを考えてしまうのでした。


テーマ:文学・小説 - ジャンル:小説・文学

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