
ものすごい迫力のライブでした。
現代の音楽シーンでここまでばりばりに力いっぱい歌う白人女性シンガーって、ほかにいるだろうか。
というか、ここまで力いっぱい歌う白人女性シンガーって、今までにいただろうか。
今、私はジャニス・ジョプリンくらいしか思い浮かばないのだが、この二人はまったくタイプが違っている。
ジャニスのヴォーカルは彼女自身の人生からにじみ出るようなR&Bあるいはブルースの精神が宿っていて、一種病的なほど凝縮されたどろどろとした情念のようなものが感じられるものだった。
それに対してアギレラのヴォーカルはスタイルとしてはジャニス以上に忠実なR&Bのヴォーカル唱法だが、まったくその歌には病的なところが感じられない。
むしろ健康的でヘルシーだ。
かつての黒人の女性ヴォーカルで探せば、(アイク&)ティナ・ターナーあたりがいちばん近いのかもしれない。
このライブでのソウル・レビューを思わせるようなたたみかけるようなスピード感と、どこまでも届きそうなパワフルなヴォーカルは今までの白人女性ヴォーカルのステージでは決して観たことがないようなものだ。
そのあまりの迫力に、観客なんかほったらかしにされているようにさえ感じることもある。
こういうライヴというのは、そういえば昔のドナ・サマーの絶頂期のライヴなんかがこんな感じだったのを憶えている。
あまりに声がよく出過ぎてしまう。
あまりに演奏が切れ過ぎて、ものすごいスピードになってしまう。
とにかく、まわりの空気から何からすべてを切り裂いていってしまうような迫力。
観客はその切れ過ぎる音についていくのでせいいっぱいになる。
今のアギレラは、とにかく何から何まですごい。
名曲がどんどん出来てしまうし、声がどこまでも出てしまう。
美貌もどんどん増してきている。
そのまばゆいばかりの若さと美しさですべてを吹き飛ばしてしまうくらいの迫力だ。
このオーストラリアでのステージもオープニングから最後まで息つく間もないくらいのパワフルな力技で押し通している。
この現代のアギレラのステージ、たしかに素晴らしいが、ただひとつ私が感じたのは、最近のアギレラの歌というのは彼女の年齢にしては少し成熟し過ぎたものが多すぎやしないか、という点。
デビューシングルの「ジニー・イン・ア・ボトル」のような等身大の歌があまりなくなってしまったような感じもしているのだ。
もちろん今の若さあふれるパワフルなヴォーカルもいいが、私は彼女が40歳くらいになってからのヴォーカルが楽しみでならない。
今、彼女が歌っている曲というのは40くらいの少し貫禄のある女性ヴォーカリストが歌ったらいちばんぴったりくる。
アギレラが40くらいになってから歌う「レディ・ママレード」は絶対に今よりもいいに違いないと思ってしまうのだ。

