![]() | マジック (2007/10/24) ブルース・スプリングスティーン 商品詳細を見る |
「ボス」ことブルース・スプリングススティーンは日本でもたいへんに人気の高いアーティストで、日本のミュージシャンの中でも佐野元春や長渕剛などを筆頭に、まるごと影響を受けた(というか私にはパクリにしか見えないんですけど…)としか思えない人たちがたくさんいる。
彼のこれほどまでの日本での人気のワケというのは、要するに日本人にとって分かりすいかっこよさを彼が持っているということだ。
彼の音楽スタイルはある一面、ロックンロールを基調にしたひじょうに分かりやすい単純さを持った音楽だ。
彼の代表作である「ボーン・トゥ・ラン」や「ボーン・イン・ザ・USA」などは英語の分からない私たち日本人が聴いても一発でかっこいいと感じるような音楽なので、そのブルースの表面上のかっこよさのみに魅入られて、彼のコピーをしたり影響を受けている日本人のミュージシャンはたくさんいる。
しかしながら、じつは彼の音楽の本質というのは、そういった単純なかっこいいロックンローラースタイルのみを追ったものではなく、むしろボブ・ディランのスタイルに近いシンガーソングライターの面の方が強い。
彼のそれほど大ヒットをしていないアルバムの「ネブラスカ」や「トンネル・オブ・ラブ」などは、ただブルースの表面的なかっこよさに惹かれてファンになったような日本人には、本音ではきっとつまらないと思っていることに違いない。
私は洋楽のアルバムを買う時、あまり余計なお金を使いたくないと思う方なので、あまりアメリカでヒットしていないものは買わないようにしている。
かといって、売れているものなら何でも買うわけでもなくて、たとえばレッド・ツェッペリンがどんなに売れていようとも、今のところ自分があまりいいと感じていないから今だに一枚も持っていないし、コールドプレイみたいにどんなに評価が高くても、自分が聴いて気持ち悪いと感じる限り買わない。
ブルース・スプリングスティーンもじつは私は昔からあまり好きではないというか、苦手なタイプのアーティストだった。
私はどうしてもああいった男の汗が飛び散るようなタイプのアーティストというのが昔から好きになれない。
歌がちゃんと歌えて高い声もちゃんと出て、繊細に歌えるような人じゃないと好きになれなかった。
だからブルース・スプリングスティーンのような歌い方というのが嫌で嫌で仕方なかった。
当然、だから彼のアルバムなど一枚も持っていなかったし、買おうと思ったこともなかった。
ただ、ロックンローラーで70〜80年代に活躍したボブ・シーガーのようなシンガーは好きで昔よく聴いていた。
ボブ・シーガーは本物のロックンローラーでまさに汗臭い感じのシンガーであったが、
私が聴き始めた頃には少し枯れた味わいになっていて、そこが好きだった。
このアルバムでのブルース・スプリングスティーンは枯れたとまでは言わないが、何かかつての彼の熱さ、私がちょっと引いてしまっていたあの感じよりは、さっぱりとした味わいがあって、良い感じがしたので、初めて彼のアルバムを買うことにした。
ぎらぎらとした若い男の油ぎった感じがなくなって、大人の男の大きい心と言ったらいいのだろうか、そんな優しさに満ちた、しかし厳しい社会批判などもある、じつに大人の作品になっているのだ。
どの曲もメロディーが美しくて感動的な曲が多く、あらためてブルースの作曲能力の凄さを感じる。
最近、こういう美しい雰囲気を持ったアルバムは久しぶりのような気がする。
私はずいぶん久しぶりに洋楽を聴いて泣いた。
#6の「ガールズ・イン・ゼア・サマー・クローズ」。
どうしてだろう。
この曲の空気感、色彩が私は好きだ。


