乱聴
今日こんなものを聴いた。
ワイルドフラワー/シェリル・クロウ
ワイルドフラワーワイルドフラワー
(2005/09/14)
シェリル・クロウ

商品詳細を見る


美しいメロディーラインとストリングスが感動的な第二幕

私がシェリル・クロウを初めて観たのは1987年のマイケル・ジャクソンの初来日コンサートだった。
あの歴史的なコンサートで彼女はバックヴォーカリストとして日本に来日している。

もっともこの時、彼女がシェリル・クロウだとはもちろん知らなかったわけで、その6年後の1993年に「チューズデイナイトクラブ」というデビューアルバムが発売になった時にそのコンサートでの来日のことを初めて知ったというわけだ。

そのマイケルのコンサートは日本でゴールデンタイムに放送されたので私はVHSビデオで録画していた。
シェリル・クロウが「チューズデイ〜」で大スターになってからもう一度観ることがあったが、たしかに彼女はバッキングヴォーカルとして参加していて、放送の中でも何度も映っている。

その後の彼女とはまるで別人のようで、髪は金髪のカーリーヘア、曲の中で一人で歌うシーンもあったが、ひどい「がなり声」のような悪声でひどく顔を歪めて、まるでやけくそみたいに歌っていたのが印象的だった。

デビュー盤の「チューズデイ〜」はほんとにいいアルバムで、当時、何か質の低い軽薄な感じの女性のポップソングが多かった時勢だっだけに、久しぶりに魅力的な女性シンガーが出てきたという感じだった。

その後、4枚のオリジナルアルバムを発表しているが、1枚ごとに微妙な変化を見せながらも、どのアルバムも質の高い作品になっていて、私もこの4枚すべてが好きで全部購入して聴いている。
来日コンサートも行ったが、ほんとに素晴らしい内容、演奏で感激したのを憶えている。

今回のアルバムは、じつは初めて買うのをよそうと思っていたアルバムで、その理由は先行シングルの#3「グッド・イズ・グッド」が少し地味すぎるように思えたからだ。

結局私はこのアルバムが発売されて3年後の2008年に買うことになった。
これは要するにこの3年間にこのアルバム以上のものがあまり無かったということの証しだ。

今こうして聴いてみると、やはり素晴らしい内容のアルバムだ。
たしかにシングルのイメージ通り、今回のアルバムはスローの曲が大半を占めていて、一聴して地味だ。
しかし、一曲一曲の質は相変わらず高くて、曲創りのうまさは今だ冴えているという感じだ。
冒頭の5曲くらいはスローな曲ばかりだが、決して退屈なことはなく、その美しいメロディーラインと包み込むような美しいストリングスが感動的。
こういうタイプの曲も創ってしまう彼女の作曲能力というのは今さらながらスゴい。

前作くらいまでで、私はシェリル・クロウに対して、あまりに一曲一曲がいつも毎回毎回よく出来ていることに、逆に少し不満がつのっていたのかもしれない。

つねに質の高い曲を提供しているが、その作曲における手際のよさのようなものがあまりに見事で、言わば職人的になってしまっていて、もう今のシェリルには聴き手をあっと驚かすような意外性が期待できないのかもしれないと私は思い始めていたのかもしれない。

以前に私は何かの本で読んだことがあったが、偉大な作曲家というのは、きれいに色や大きさの揃った小石を次々と創り続けるような人ではなく、時に粉のような小石を創ってしまうが、替わりに時々とてつもなく大きく美しい石をも創ってしまうような人なのだと。

シェリル・クロウはこのアルバムの前に初めてベストアルバムを出している。
いったん今までの作品でひと区切りつけたかったのだと思う。
なぜなら、このアルバムが今までの彼女のどのアルバムとも似ていないし、今までの作品の中で最もアーティスティックな面が出ているからだ。

このシェリル・クロウの第二幕とも言える変化が、先週発売された新譜「Detours」でさらに明確な形で出てきているような気がしている。

テーマ:女性アーティスト - ジャンル:音楽