
「『もどり道』にもどる陽水」
2006年8月19日、人見記念講堂で行われた井上陽水の最新のライヴの模様と陽水のインタビューがオンエアされた。
〈OAされた曲目〉
・「闇夜の国から」
・「なぜか上海」
・「夏まつり」
・「白いカーネーション」
・「海へ来なさい」
・「飾りじゃないのよ涙は」
・「招待状のないショー」
・「11:36 LOVE TRAIN」
・「とまどうペリカン」
・「長い猫」
・「リバーサイドホテル」
・「感謝知らずの女」
・「氷の世界」
・「夢の中へ」
・「少年時代」
・「おやすみ」
・「あなたにお金」(収録)
近年の井上陽水は、以前のコンサートぎらいで有名だった頃の彼とはうって変わり、精力的にライヴ活動をこなしている。
それは、陽水がミュージシャンとして世に出た1970年代当時の彼のようでもある。
井上陽水は今年4年ぶりに新しいアルバム「LOVE COMPLEX」を発表したが、今回のこの一連のコンサートツアーでは、その新作を中心とした新しいスタイルをアピールするというよりも、デビュー当時の原点に戻った井上陽水の総決算的な形になっていることが分かる。
陽水が今こういった形に戻ってきているのは、年齢的なこと(今年で58歳)か、心境の変化か、セールス的なもの(たしかに最近は大ヒット曲は無くなった)なのか、いやそのすべてなのかは知るよしもないが、私が思うに最近の陽水の発言から察するに、年齢を重ねたことによる心境の変化が何よりも大きいと感じているのだ。
彼の30代から40代前半くらいの頃のライヴはその圧倒的な声量とパワーで押しまくるタイプのロック・コンサートであって、そのパワーでややもすると観客を置き去りにするような感じのするコンサートだった。
ところが、この日のコンサートは、もっと観客と語り合うような雰囲気のものになっていることが分かる。
それはとりも直さず、彼のデビュー当初の頃のコンサート・スタイルつまり、ライヴ・アルバム「もどり道」のスタイルであることに気付くのだ。
ライヴのオープニングから前半は弾き語りによるアコースティックなスタイルで、後半にバンドを入れたエレクトリック・スタイルをもってくるという構成だ。
前半の弾き語りでは、少し前までのライヴではほとんど聴くこともなくなった「白いカーネーション」や「夏まつり」といった初期の名曲が披露されている。
もちろん「もどり道」の頃とは陽水の声はだいぶ変わってしまいキーも下がったが、それを補ってあまりあるほど初期の曲というのは素晴らしい。
後半のエレクトリック・セットでは陽水らしい新曲の「長い猫」や名曲の数々が演奏されたが、あらためて「リバーサイド・ホテル」という曲。
この曲は陽水の声、発音、詩とメロディーのすべてがうまくきっちりとハマッた曲という気がした。
この曲ほど陽水らしい曲はないのではないか、と思うほどやっぱりスゴイですね、この曲は。
「少年時代」「おやすみ」と続けたアンコールのセンチメンタルな世界は、陽水の歌の普遍的な美しさを実感させてくれるもので、じつに感動的なフィナーレだった。
原点に還ってきた井上陽水。また新たな段階に入ってきたという気がする。


